- 【デレマス】凛「私は――負けない」1 投稿日 2024年5月2日 14:30:08 (プロデューサーさんっ!SSですよ、SS!)
PERSONAL DATA
渋谷凛 RIN SHIBUYA
AGE
――17 years old
BIRTHDAY
――10 Aug.
HEIGHT
――166cm
WEIGHT
――45kg
VITAL STATISTICS
――82-57-83
IDOL RANK
――B:super idol
――彼女は、類稀なる美貌とオーラを持っていた。
――彼女は、すらりと伸びた脚、絹のように輝く長い黒髪を持っていた。
――彼女は、女としての武器が特定部分に偏っていない、バランスの良いプロポーションを持っていた。
――彼女は、輝く世界に魔法をかける素質と、努力の才能を持っていた。
彼女は――まさにアイドルとなる運命を背負って生を授けられた人間のようだった。
・・・・・・・・・・・・
2013年 三月某日
振り返らず前を向くよ――――
凛の目の前で蒼いサイリウムがたくさん揺れている。彼女の刻み付けるビートに乗って、規則的に、統率的に。
ラストのサビを歌い上げ、縦ノリの曲はアウトロへ。彼女の身体が一段と躍動し、最後の輝きを放つ。
Never say never、彼女のデビュー作は、アンコールとして応えた曲だった。
“諦めるなんて言わない”――最後の曲としてなんと相応しいことだろう。
シンセリードが入ってくれば、もうじき全てのプログラムは終わりだ。
自身を照らす正面のスポットライトに向けて左手のマイクを突き出した。
地鳴りのように沸き上がる歓声。横浜アリーナを埋め尽くす観衆が、
ステージの上に立つ華奢な少女へ、最大の拍手を贈った。
――しーぶーりん!
――しーぶーりん!
偶像を呼ぶ声が聞こえる。
偶像を讃える声が聞こえる。
全身から汗が噴き出ていた。それこそが壮快だ。
額や頬をつたうもの、顎の先からしたたり落ちるもの。白い腕の表面へ珠のように浮かび、光を乱反射しているもの。
全て、彼女が放散させた意力の形態―カタチ―だから。
全身が悲鳴を上げていた。それさえも心地よい。
首筋を流れる汗に張り付いた髪、激しく上下する胸と肩。蒼いブーツに隠されたところで、密かに痙攣する脚。
全て、彼女が全力で駆け抜けた証左―アカシ―だから。
凛が発する、有らむ限りの感謝を示した叫びに、観客はより一層の歓声を返した。
その喝采に見送られながら、彼女は少しだけ名残惜しそうに舞台の上手へと下がっていった。
・・・・・・・・・・・・
「よぉし、よし! 凛、最高だったぞ!」
無事役目を勤め上げ、
上手袖へ戻ってきた少女を一番最初に迎えたのは、他でもない凛の担当プロデューサー、Pだった。
ガッツポーズをした腕をぶんぶんと上下させ、まるで我がことのように喜ぶその姿を見て、凛は苦笑した。
「プロデューサー、はしゃぎすぎだよ」
しかしPは意に介さない。
「二人三脚でやってきたアイドルがソロで横浜アリーナ3DAYSを埋めて成功させたんだぞ、嬉しくないわけがないだろう」
そう、今をときめくアイドル業界、破竹の勢いで進撃する渋谷凛の横浜アリーナ単独ライブ、今日はその千秋楽。
デビューから僅か二年しか経っていない若偶像が、三日間で延べ四万人を動員したこの公演は
大成功と云って差し支えなかった。
Pは黒いレース手套がはめられた凛の手を取って、同じく上下に振る。
激しいダンスで上気した彼女の頬が、さらに赤くなるように見えた。
「ちょ、ちょっとプロデューサー、終わったばかりなんだから落ち着かせてってば」
「あ、すまんすまん。つい、な」
「んもう、どっちが保護者なんだかわからないじゃない」
軽く非難するように見えて、しかし満更でもなさそうな言い種ではあった。
「はは、面目ない。ほら、タオルとOS-1だ」
水色のクロスと経口補水液を寄越しながら破顔するPにつられて、凛も笑顔になる。
ほっと、安堵の色も混じっているように見え、そこにはクールなBランクアイドルの面影はなく、あるのは年相応の少女のあどけない顔。
「凛、今日のステージから見た客席はどうだった?」
「うん、今日は特に一体感があったと思う。みんなどうやったらそこまで揃うの? っていうくらいサイリウムの動きも相の手も同じだったし」
「まったくだ、俺もアイドルファンの人たちの団結力には目を見張るものがあるよ」
「ふふっ、そうだね。……ねえ、プロデューサー、この三日間、お客さんみんな楽しんでくれたかな?」
タオルで今度は首の周りを拭きながら、凛は視線だけPに向けて訊ねた。
「そりゃあお前、今も止まないあの歓声を聞けば答えは火を見るより明らかだろ?」
そう言いながらPは袖から観客席の方に親指を向ける。
凛が退場してからというもの、会場の熱気は鎮まることがなかった。
――しぶりーん! ブヒブヒィイイイィィイ!!
――凛ちゃああああん! サイッコオオオオオオ!!
センター席では熱心なファンが、公式ライブタオルを振り回しながら凛に声援を送り続けている。
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Source: プロデューサーさんっ!SSですよ、SS!-アイマスSSまとめ